本日、大阪府議会2024年2月定例会が閉会しました。
閉会に際し、会派の声明を公表しましたので掲載します。
2024年3月22日
民主ネット大阪府議会議員団
代 表 野々上 愛
幹事長 山田けんた
大阪府議会令和6年(2024年)2月定例会における
民主ネット大阪府議会議員団採決態度について
元日の能登半島地震により、あるべき自治体の姿、防災の要たる広域行政の姿について、深く考えさせられる一年の始まりとなった。一方、大阪府議会では、万博関連予算による今後の大阪の財政への負の影響が明らかになってきた。今、必要な予算は、政策は何か、全府民的な議論が必要な時である。
府民の付託を受け、議論をするべき府議会にあって、少数会派に十分な意見表明の機会が設けられていないのは残念である。本来であれば、本会議の討論等を通じて行うべき我が会派の主だった議案への態度について、以下の通り述べるものである。
【反対】議案1号 令和6年度(2024年)大阪府一般会計予算の件
新年度予算は、府民生活に必要な多くの予算が含まれている一方、万博や国際金融都市など、府民感覚とかけ離れた提案も多く、根本的な軌道修正がはかられるべきである。ここでは、特に新年度から開始されようとしている、私立高校等授業料無償化制度の導入にかかる予算について述べる。
所得制限のない高校等授業料無償化制度が段階的に開始され、無償化に要する予算は2023年度より73億円増加の229億円となる。教育への投資は歓迎すべきものであるが、前提として私立高校への投資は公立高校へ通う生徒に対して、公平でなければならない。2024年度の私立高校の生徒一人あたりの公費は経常費助成額(34万2千円)に無償化対象の標準授業料(63万円)を合わせると97万2千円に上る。これは大阪府が私立高校に経常的に必要な経費と認める標準教育費(68万4千円)を大幅に超えている。私学経営には建設費や退職金等を要することから、無償化のためには、標準教育費を超えた支援が必要である。
しかし、そのための経費は公立を基に算定されるべきである。無償化として府が補填する63万円は私学との政治的妥協により導き出された額であり、公立との公平性については説明がなされていない。本議会の教育常任委員会で、公立と私立に対して公平な支援の必要性について吉村知事に質したところ、選択肢があることが大切である旨の答弁があり、公私の公平性よりも無償化が優先された政策であることは明らかである。
府立高校の校舎は老朽化や劣化が進んでおり、内装についてはほとんど放置されてきた。生徒一人当たりの教育費のうち資本的経費は全国平均を大きく下回っていることもその証左である。必要な公立高校への投資がなされていない。
2024年度高校入試では公立高校志願者数が大幅に減少し、定員割れ校が多数出ている。府立学校条例で3年連続定員割れルールともあいまって、学校現場に大きなストレスをかけることにも繋がっている。
一方で、私学に対しては、授業料の上限規制、いわゆるキャップ制が採用されており、教育の質の向上が制限されている。公設民営校である水都国際高校の生徒一人当たりの2024年度予算が約113万円であることからも、私学は標準授業料+経常費助成を超えて教育に投資する選択肢はあるべきである。しかし、授業料無償化制度に応じなければ、63万円の支援が0円となってしまうことは、より良い教育を受けさせたい家庭に対して罰則的である。
以上より、無償化制度に係る予算は、公立高校に対して、及び一部制度に参加できない私学に対して、公平でなく不十分であり、これらを含む新年度予算について反対する。
【反対】議案71号 阪神高速道路株式会社の事業変更について同意する件
阪神高速道路の上限料金が32.3kmの1320円から、51.7kmの1950円へと引き上げとなる。利用距離に応じて負担を求める受益者負担の範囲が拡大されるとのことである。例えば、枚方市内から関西国際空港に行く場合、枚方学研ICからでは阪神高速道路以外も利用するため、これまでは最安値のルートは東大阪線で片道2860円であったものが、同ルートの場合3490円となり負担が増す。つまり、郊外住民の負担が増すことになる。
また、「激変緩和措置」として、大阪市内の環状線内の出入口と関西国際空港方面の料金は1320円と据え置かれる。しかし、北河内方面から関西国際空港方面に対してはその様な激変緩和措置はない。これでは受益者負担とすら言えず、特に北河内方面等、都心部から離れる地域の利用者負担が増すばかりであり、賛成できない。
また、大口・多頻度割引は拡充されるが、大口事業者のみが優遇される本制度にも疑問が残る。
【賛成】議案85号 大阪府職員基本条例及び職員の退職管理に関する条例一部改正の件
大阪府では職員採用試験の倍率の低下傾向が続き、また近年は若年層職員の離職数が急増している。働きやすい職場環境の確保は急務の課題である。今般の条例改正では、人事評価制度の見直しが行われている。全国でもあまり例を見ない、相対評価を勤務評定に反映させる大阪府の職員基本条例は、絶対評価と相対評価のアンバランスで職員の勤務意欲をそいでいるとの指摘がなされてきた。相対評価の下位区分を15%から5%へ低減させたことは、職員の執務意欲の向上という点からも一定の評価をするものである。
今般の条例改正の土台となった「組織・人事給与制度の今後の方向性(案)」では、今後も概ね3年毎の見直しを提起している。府民の生命と財産を守ることが使命である公務労働のあるべき姿を考え、職員の働きがいを、今後も不断の努力を求めるものである。
【反対】議案109号 大阪府職業能力開発促進法関係事務手数料条例一部改正の件
技能検定試験のうち3級の実技試験について、23歳未満の受験者について、雇用保険被保険者以外の者(在校生等)に4,500円の割引を行うものである。しかし一方で、これまで実施されていた2級実技試験を受ける25歳未満の雇用保険被保険者(2022年度約950人)に対する9,000円の手数料減額が廃止される。そもそも2022年度には、2・3級の在校生等の実技試験受験者に対して、9,000円の減額制度が廃止されたことを考えると、在校生等の3級実技試験の減額制度は一部復元されるに留まる一方、25歳未満の2級実技試験受験者の手数料減免はすべて廃止される結果となっており、高度な技術を有していることの証明を得ようとする者にとって負担は増加する。技能に対する評価を高め、技術者の地位向上を図るための本制度が、技術者の負担を高める方向に改正されることには賛成できない。
【反対】委員会提出議案1号 大阪府基礎自治機能の充実及び強化に関する条例制定の件
昨年設置された特別委員会で交渉3会派のみの議論を経て提案された条例であり、本日の本会議に上程され即日採決に付されることはあまりにも乱暴である。小数会派はもとより、十分な審議時間が確保されなかったことに抗議する。
地方自治法の本旨は何か、その中での広域自治体たる大阪府の役割は何か、その前提を確認すべきである。補完性の原則を述べた、法第2条の精神を再確認すべきである。
市町村の取り組みに対しての府の役割を規定している条例となっているが、新年度予算で提案された市町村振興補助金の合併加配も合わせ、合併も含めた市町村の対応を求めているのは明らかである。本条例の立法事実は何か、また市町村を対象とするこの条例制定にあたって、当の市町村のヒアリングも行われていないことは大きな問題である。
また、議員提案条例のあり方については、昨年、埼玉県で虐待禁止条例の改正案の提案、県内外からの大きな批判を受けての取り下げ、と言う騒動を受け、会派を超えた勉強会も含めた十分な議員間討議、専門家の適切な介入、関係者からのヒアリング、パブリックコメントの実施や市民参加の公聴会などのプロセスを踏むべきである、との声がある。大阪府議会でも、こういった流れを十分に検討し、基礎自治体のあり方について議論を尽くす前に、市町村にも影響が及ぶ条例が拙速に採決されることには反対である。
【反対】意見書2号 学校現場における「特定分野に特異な才能のある児童生徒」への対応に関する意見書
本意見書は、いわゆる「ギフテッド教育」について述べているものである。しかしながら、ギフテッドを定性的に定義することは、文科省が設置した「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する 学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」の2022年の答申が認めるように困難であり適当でもない。エリート型の教育はギフテッドの特性を伸ばすという意味でも適切ではないし、子どもたちの利益にもならないことは、実証研究である「異才発掘プロジェクト ROCKET」の中邑賢龍東京大学教授なども指摘している。
一方で、ギフテッドの子どもたちが現行の初等中等教育で困難を抱えていることは認識される必要がある。だだし、この問題はギフテッドに限らず子どもの認知能力の多様性に対応できるような形での支援を拡充する方向で統合教育を進めることが、ギフテッドの子どもたちを含めた多くの子ども利益になりうる。
この際、発達程度の多様な子どもたちが共同で拡張型のプロジェクトに取り組む、という方向性は、先行例を見ても有用なものと判断することができる。これは、統合教育の推進を掲げた1994年のサラマンカ宣言をはじめとする、昨今の教育理論の潮流にも合致する。
教育基本法の理念を元に、児童生徒を公平平等に取り扱うのが原則であるし、まずは少人数学級の推進など、今教育現場が抱える課題の解決に向け、予算を確保するのが政治の役割である。よって、この意見書には反対である。
・取り下げとなった「パレスチナ自治区ガザ地区での即時停戦を求める決議(案)」について
本議会では、当会派より「パレスチナ自治区ガザ地区での即時停戦を求める決議(案)」を示した。
イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区に対する攻撃はすでに今世紀最大の人道問題の一つへと発展している。「日本国民は、恒久の平和を念願し」と憲法前文に謳われている通り、我々はこれまでも世界平和を希求する各国の市民とともに、紛争を平和裡に終結させることの必要性と、そのことのために努力する意思を繰り返し表明してきた。
大阪府議会としても2022年3月1日付で「ロシアによるウクライナへの侵略を強く非難する決議」を取りまとめたことは記憶に新しい。
しかし、イスラエルによるパレスチナ・ガザ地区に対する攻撃に対しては、これまで何らアクションを起こしておらず、本議会に当会派から提案した決議は、事前の政務調査会で交渉3会派により取り下げの扱いとなり、本会議への上程すらかなわなかった。
ハマスによるイスラエル市民に対する不当な攻撃に対して、当事者を処罰する権利をイスラエルが有するとしても、それがパレスチナの子どもを含む罪なき市民を虐殺する理由にはならないのであり、そのことは何度でも確認される必要があるだろう。グローバルな環境や経済の問題は深刻さを増し、全人類が一致して対応に当たらなければいけない時代に於いて、まず我々自身が世界平和のためにどう振る舞うべきかを考える時であり、その姿勢の一端が示せなかったことには忸怩たる思いである。
以上
Comments