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  • 執筆者の写真nonoueai

2025年大阪・関西万博の会場建設費の見直し及び対応に関する大阪府議会議員全員協議会について

2023年11月10日

民主ネット大阪府議会議員団

代表 野々上 愛

幹事長 山田けんた


2025年大阪・関西万博の会場建設費の見直し及び対応に関する

大阪府議会議員全員協議会について


本日、大阪府議会議員全員協議会が開催され、2025大阪・関西万博の3年ぶり2度目の会場建設費の増嵩について、博覧会協会、経済産業省、そして大阪府知事による説明がなされ、交渉3会派による質問が行われました。11月6日に議長に対して申し入れを行いましたが、議会運営委員会で検討されることもなく、今回も少数会派には質問、意見表明の機会が与えられませんでした。このことについては強く、抗議の意を示すものです。

本来であれば議員全員協議会の場で質問を重ね、今般の問題点を明らかにし、また府民の意見を代弁したかっただけに残念でなりません。会派として、今回の会場建設費の増嵩について、また2025大阪・関西万博開催に対しての見解をまとめました。




・万博とはどうあるべきか

万国博覧会の開催は21世紀の日本でどのような効果が期待できるでしょうか。国際博覧会条約は万博を「公衆の教育を主たる目的とする催し」であり、「人類が利用することのできる手段又は人類の活動の一若しくは二以上の部門において達成された進歩若しくはそれらの部門における将来の展望を示す」ためのものとしています。

第一回の万国博覧会が開かれたのは1851年のロンドンにおいてであり、まだ飛行機もインターネットも影も形もない時代に、世界各国から集められた品々が人々の視野を大きく広げたであろうことは疑いないでしょう。しかし、21世紀の日本においては、大半の市民がインターネットにアクセスすることができ、世界各国に留学する学生も珍しくない時代です。こういった時代に、数千億の予算を「半年の会場で行われる限定的なイベント」に費やす意義があるでしょうか。


 また、20世紀半ば、前回の大阪での博覧会の時代は、高度経済成長が期待できた時代です。大規模な集客が見込めるイベントを開催し、そのために交通や宿泊などのインフラを一気に整備することで、更なる経済成長の起爆剤にすることに、大いに合理性があった時代です。前回の大阪万博でも、例えば、会場アクセスのために北大阪急行が整備され、その周りに市街地が形成されるといった効果が見られました。2005年に愛知で開催された「愛・地球博」も環境破壊という非難は浴びましたが、一方で新しいハブ空港としてのセントレアの開港と相乗効果で交通網が整備されるように設計されていました。2025年の大阪万博のライバルとして、アゼルバイジャンのバクーが候補に上がっていましたが、同国は油田などによって経済成長を続ける一方で、まだまだ観光インフラや市民の国際社会との交流は限定的ですから、こういった都市で開催することは、経済的見返りも期待できたでしょう。一方、大阪はすでにある程度のインフラ整備を終え、むしろ老朽化したインフラの更新が喫緊の課題となっています。2005年と比べても、日本の経済に残された余裕は小さくなっています。

今、重要なのは大規模な投資で新しい経済インフラを大規模に構築することではなく、今あるインフラの更新を行なっていくための、民主的で効率的な資源配分の仕組みです。



・いのち輝く未来社会を標榜するのに相応しい万博であるのか

 今回の万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。「新たな価値観を生み出し、持続可能な未来を構築する」ことが謳われています。しかし、半年で壊してしまう建物のために数百億円を費やし、集中的、集権的なインフラ構築を行う20世紀型の開発手法が「持続可能な」「新たな未来」と言えるのでしょうか。 

 そもそも、万博はカジノ・IRの開発と連動しているというのが建前でした。万博を実現するための夢洲への交通網や用地の整備は、当初2024年開業が予定されていた、カジノ事業者が行なってくれる、と納税者は期待させられていたわけです。しかし、カジノ計画の遅れによって、むしろ「万博を名目に、カジノのために大阪府民、あるいは日本国民の税金を使ってインフラ整備をする」という本末転倒な展開になっています。少なくともカジノとの連携という皮算用が頓挫した段階で、夢洲での万博開催は見直されるべきでした。しかも、新型コロナやウクライナとロシアの戦争、国内的な労働力不足などの様々な要因で予算は鰻登りです。当初1250億円だった会場建設費は、今回の2度目の増額で2350億円となりました。戦争による資源危機など、いくつかの問題は沈静化していますが、日本社会全体を覆う労働力不足や円安といった、最も重要な要因は今後も深刻化が予想されることを考えれば、これが最後だとも思えません。当然これが最後であるべきですが、一方で安全には十分にお金をかけなければいけないため、安易な節約が行われないようにする必要があるわけです。



・夢洲での開催の正当性を問う

 前回の大阪万博が事後の都市開発を想定して、北摂の安定した地盤に会場を置いていたのに対して、今回は利用法に制限のある夢洲が会場です。万博では各国が競って、先端の技術を利用した奇抜なデザインのパビリオンを建設しますが、交通アクセスも利用できる工法も限られた夢洲で、安全な建物が建設できるのかも明確ではありません。

 日本が地震国なのは日本人には当然の前提ですが、チェコ政府の担当者が「私たちの国には台風も地震もない」と発言したと報道された通り、大半の国の想定外の事態が日本では生じるのであり、建築を担当するであろう日本の建築会社と各国の設計担当者は綿密な連携をとっていく必要があると思われますが、すでに建築だけでも時間切れという声もある中で、それが可能でしょうか。

 地震という観点では、大阪は東南海地震が危惧されている場所です。夢洲はまさに津波被害が想定される場所になりますが、果たして、日本語を介さない観光客を含めた大勢が集まる夢洲で、大規模災害が起こった時に、適切な避難が可能でしょうか。夢洲への交通アクセスは限られており、それらの一つでも利用できなくなった時、会場の混乱は必至でしょう。万博には遠足などで近隣の小中学生が動員されることになっていますが、多くの保護者は、この問題への十分な対策なしに、我が子を参加させることに不安を感じるのではないでしょうか。



・大阪が取るべき方向性

 万博はライフサイエンス、バイオメディカル発展の起爆剤にすることも謳われています。しかしその一方で、大阪府は所管していた、国際的にも評価の高い公益財団法人大阪バイオサイエンス研究所の廃止をはじめ、病院や医療サービス、研究機能の簡易化を進めています。これらはライフサイエンスを育む土台のようなものです。この間、大阪府市の行なっていることは土台を掘り崩しつつ、看板だけを高く高く掲げようという、極めて不安定で不自然な営為です。科学というのは半年のお祭りで発展するものではなく、何十年という地道な研究の蓄積で成立するものです。今回万博に使われる予算の何割かでも、健康と持続可能な社会の構築のための研究活動の息の長い支援に使うようにすることが、本来の意味での「いのち輝く」政策ではないでしょうか。


 結局のところ、政治家もメディアも今そこにある問題から目を背けているわけです。例えば水道インフラの更新にかかる莫大な予算の話や、学生たちが研究者になるのを忌避するようになった理由の話は、多くの人にとって嬉しくなるような話ではなく、報道も歓迎されないわけです。それに対して、大規模イベントやそのためのマスコットの発表というような話は、報道もしやすく、政治家が「やってる感」を偽装するための極めて便利で安易なツールとなっています。しかし、万博に費やされる莫大な予算は、今の政治家とメディアを助けるための、未来世代へのツケです。

 集約的な経済インフラのための莫大な投資という20世紀型の開発に拘泥することで、社会の基本を維持することが等閑になるのであれば、それは二重の意味で未来世代へのツケなのです。



・2度目の増額は認められない。与えられた予算の範疇での万博開催を

 これらのことを考えるならば、我々は万博は極力コンパクトに行うべきであり、予算があるのであれば少しでも他のもっと必要なところに振り向けるべきであると考えます。すでに1850億への増額の時に「これ以上の増額はない」と約束されていたことも重要であり、その約束を尊重できないのであれば万博の開催そのものから根本的に見直すことも考えるべきです。もちろん、防災などの安全性に関しては十分な予算をかけるべきで、少しでも安全性が損なわれるような節約は現に慎まれる必要があります。その上で、木造リングなど無駄な支出を最大限削減し、イメージやらシンボルやらで誤魔化されない、真の国際交流の機会を提供することに集中した、コンパクトな万博を構築するべきです。


以上




本日の議員全員協議会の最後に、共産党の石川議員が少数会派の発言機会を求める動議を緊急提出。 議員として当然の権利の主張に、賛同したのは提出者を含めてわずか3名でした。





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1 Comment


昌己 笹部
昌己 笹部
Nov 11, 2023

コンパクト化して開催予定する?とかよりも延期もしくは中止を考える機会と強く訴える方がいいと思いますが、如何でしょうか?開催が前提条件でしょうか?府民全体の世論が前提で🐜IR誘致が前提でもある万博で🐜これら腹黒い府政運営に反対🐜で論破すべき事だと思ている🐜様ではないでしょうか?

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